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第33章 市八
翌朝、サヨの実家にも顔を出し、鷺とるいに挨拶をする。
サヨからは、昨夜萬屋から家に帰るとき、子供達が寝てしまって、信太郎を抱いて運んで貰おうと家に行ったら風呂に入っていると言われ、仕方なしに萬屋の兄さんに手伝って貰ったんだよ、と詰られる。全く肝心な時に居ないんだから、と膨れるサヨに平謝りに謝るのを、鷺とるいが笑って見ていた。

朝餉はるいの飯を食い、短い休みを満喫した。

サヨと子供だけもう暫く実家に居てもいいぜ?というと、市っちゃんそんなこと言って独身気分になるつもりじゃないでしょうね?と眉を釣り上げ、私だって繕い物の仕事があるんだから帰るわよ、と鼻息荒く睨まれる。

「まぁまぁ、しっかり尻に敷いてること」

るいが笑うと

「そりゃお前の娘だもんなぁ、しょうがねぇや」

と鷺が笑い、どういう意味だい?とるいに耳を引っ張られる鷺を、二人笑って指差した。

こんな他愛もない日常。

ともすれば退屈とも感じる、きっとそれこそが、本当の幸せ。

捕り物も騒ぎも、読み本や芝居の中だけでいい。

今あるこの幸せを噛み締めて、サヨと子供達を護って行くのだと、改めて胸に誓った。





ー了ー









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