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第36章 間宮 涼香
少し時間は遡って、私が中学生になった頃。
ウチに住み込みの職人さんが入職した。

私のウチは、明治時代から続く造り酒屋で。
お父さんが四代目。私は長女で8つ下の弟と2人姉弟。
店は弟が継ぐ、と両親は思ってるけど、私も子供の頃から見て育った酒蔵の雰囲気が好きだし、大人になって嫁に出たとしても、関わって行きたいとは思ってる。
お父さんの他に、何人も通いの職人さんが居たけど、みんなおじさんばっかり。
中には先代、お爺ちゃんの代からの職人さんも居た。
そんな中、高校を出たばかりで入職した龍沢さんは、一際若くて、キラキラして見えた。

他県から来た彼は、新潟に身寄りもなく、部屋を借りて独り暮らしするにも親御さんも心配だろう、ということで、二十歳になるまで、という約束で、2年間ウチで住むことになった。

弟は8つも年下だから、まだ5歳の幼稚園児で。
私はお兄さんかお姉さんが欲しかったから、龍沢さんが家にいることは素直に嬉しかった。
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