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第4章 高野 皐月
私は、お父ちゃんとお母ちゃんの顔を知らんかった。
でも、そんなん私だけやない。

私は、昭和二十年の五月生まれ。
終戦の間近で、男の人はほとんど兵隊さんになって戦争に行っとったし、空襲も多かった。

お父ちゃんが兵隊さんになって戦争に行って、空襲で、街が焼けて、お母ちゃんやお兄ちゃんやお姉ちゃんと離れ離れになったり、家族が死んでしまった子はいっぱい居てた。
私も、そのうちの1人。

親や家族の顔を覚えてる子も、覚えてない子もおる。
私は、生まれた病院が焼けて、看護婦さんに連れられてここに来た、と聞いた。
看護婦さんや病院の先生が、一所懸命お父ちゃんとお母ちゃんを探してくれとる、と。
お父ちゃんとお母ちゃんも私の事を一所懸命探してくれとる、と、そう言われて育った。

ここは、孤児院。
親とはぐれたり、親を亡くした子供が、ぎょうさん居てる。
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