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第4章 高野 皐月
お母ちゃんは、きゅ、と唇をひき結んで、小さく頷いた。

「皐月は、大阪の病院で生まれて、病院が焼けて、お母さんと離れてしまったんやて。お父ちゃんがな、どうしても女の子が欲しいいうて。でも、お母ちゃん、女の子はよう産まなんだん。それで、街には、親とはぐれた子供がたくさん居って、育ててくれる人を探しとるって、産婆しとるお母ちゃんのお姉ちゃんに聞いたん。お父ちゃん、皐月を見て、可愛い女の子や!ウチの子にする!ってすぐに決めたんよ。」

「…………」

「お母ちゃんは、皐月を産んではおらん。でも、お母ちゃんもお父ちゃんも、皐月のことは可愛い娘と思うてる。うちに縁があって良かったなぁって思うてる。本当のお母ちゃんやらお父ちゃんに、会いたい…?」

「…わからへん。そんなん言われても、お父ちゃんはお父ちゃんやし、お母ちゃんはお母ちゃんや。…そう、思っとっていい?」

「何言うてんの、当たり前やろ?お父ちゃんなんか郁男兄ちゃんやら敬三兄ちゃんより皐月皐月ていうとるやないの。」
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