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続・飼っていたペットに飼われています。
第16章 大人になった君と狂った歯車。①(スイ目線)

音楽界の最大権力者と呼ばれる東堂会長のバースデーパーティーに招かれた俺達を特設ステージに上げて曲を聞かせるチャンスを作るため、サキは命令されるがままにその親父の膝に乗り、細い腰を抱かれている。
ステージからも見える、その鳥肌の立った白い腕にしっかりとアー写と宣材を握りしめ、何度も近づいてくる顔を避けながらも、必死に俺達のアピールをしている彼女のか細い声が聞こえる。
演奏する曲はバラードを好むという親父のために『S』をリクエストされていた。
だが、ヤスがドラムスティックを2回打ち鳴らしたところで俺はマイク越しに小さく言った。
「…悪い。…歌えない。」
異変を察したメンバーが集まってきて、小声で話す。
「…おい、スイ!」
「…だめだ。あの人に嫌われたら終わりだぞ!」
「…サキちゃんの努力が全部無駄になる!」
わかってる。わかってるけど…。
絞り出すように言った。
「……この曲は、サキを幸せにするために作ったんだ。」
「………。」
「いまのあいつ見てたら歌えない。」
「………。」
「…スイ、『M』ならいけるか? どんな酷い状態でもいい。多分、いま歌わなかったら誰よりもお前が後悔する。」
「……わかった。」
200名ほどの芸能関係者が詰まったその会場は、すでにざわついていた。その真ん中のサキの顔は……、見れない。
「いやー、皆さんすみません! 流石にこれだけすごい皆さん方の前で歌うとなると緊張してしまったみたいで。こいつこんなコワイ顔のクセに可愛いとこあるでしょ? 気分を盛り上げるために、うちの代表的なアップテンポナンバーの『M』をお届けしてもいいでしょうか?」
コウヘイが明るく取り繕い、場内は笑いと拍手が上がった。
俺は何とか唯一サキではなくメンバーを想って作った曲である『M』を歌いきり、ステージを降りた。
ステージからも見える、その鳥肌の立った白い腕にしっかりとアー写と宣材を握りしめ、何度も近づいてくる顔を避けながらも、必死に俺達のアピールをしている彼女のか細い声が聞こえる。
演奏する曲はバラードを好むという親父のために『S』をリクエストされていた。
だが、ヤスがドラムスティックを2回打ち鳴らしたところで俺はマイク越しに小さく言った。
「…悪い。…歌えない。」
異変を察したメンバーが集まってきて、小声で話す。
「…おい、スイ!」
「…だめだ。あの人に嫌われたら終わりだぞ!」
「…サキちゃんの努力が全部無駄になる!」
わかってる。わかってるけど…。
絞り出すように言った。
「……この曲は、サキを幸せにするために作ったんだ。」
「………。」
「いまのあいつ見てたら歌えない。」
「………。」
「…スイ、『M』ならいけるか? どんな酷い状態でもいい。多分、いま歌わなかったら誰よりもお前が後悔する。」
「……わかった。」
200名ほどの芸能関係者が詰まったその会場は、すでにざわついていた。その真ん中のサキの顔は……、見れない。
「いやー、皆さんすみません! 流石にこれだけすごい皆さん方の前で歌うとなると緊張してしまったみたいで。こいつこんなコワイ顔のクセに可愛いとこあるでしょ? 気分を盛り上げるために、うちの代表的なアップテンポナンバーの『M』をお届けしてもいいでしょうか?」
コウヘイが明るく取り繕い、場内は笑いと拍手が上がった。
俺は何とか唯一サキではなくメンバーを想って作った曲である『M』を歌いきり、ステージを降りた。

