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続・飼っていたペットに飼われています。
第24章 春の風はいつも君に優しい。①(スイ目線)
「…おにいちゃん?」

「そう、義理のね。ここ見て? サキのお父さんの名前と養子って書いてあるでしょ?」
 大人だったサキが喜んで家で保管していた戸籍謄本を見せながら説明する。
「サキが…。サキがお兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しかったって言ったから、お父さんとお母さんが遺しておいてくれたのかな…?」
「うん…。そうかもしれないね…。」
 声を振るわせながら顔を覆った少女を優しく抱きしめながら、胸の痛みを抑えて続ける。
「だから、サキは俺には好きなだけ甘えていいんだ。絶対に遠慮するな。1年に1度だけ何でも叶える。ただし、俺のことは皆には内緒ね。」
「…どうして?」
「俺はちょっとヤンチャしてたから。バンドとかやってるし。サキがいまお世話になってるお家の人たちは大きな病院を経営してたりするから、迷惑掛けたくないんだ。」
「わかった。」

 気に入っていた肌触りのいい例のルームウェアと未使用のショーツを渡して着替えを済ませた彼女を出迎える。
「やっぱり少し大きいか。ごめんね。」
 以前より20cmほど小さくなった彼女の袖をまくってやりながらそう話す。
「ねえ、これ誰の? スイさんの彼女?」
「うーん、まあ大切な人かな。」
「ふーん。」
 あまり納得のいっていない顔の少女に、これ以上詳しく聞かれたくないので話題を変える。
「サキ、何か食べたいものある? 俺、料理うまいよ。」
「朝がパンケーキでお昼がパスタ! それでそのあとお菓子にクッキー作って!」
 当たり前かもしれないが、好みが大人のままと一緒でドキッとした。

 昼食のあと、クッキーは一緒に作ることになった。
 俺が分量を計っていると、サキが冷蔵庫から何かを持ってくる。
「スイさん、これも入れて?」
 オレンジのその野菜を俺に渡して続ける。
「なんか、キャロットクッキーがいいなって。スイさんっぽいなって。」
「ああ…、確かに俺人参好きだよ。…サキ。」
 駄目だ、ところどころ見え隠れする過去の彼女の記憶に嫌でも期待してしまう。これから成長するにつれてそれが更に強くなるんだろうな。これは、この胸の痛みは、サキを好き勝手に傷つけてきた自分自身への罰だと思った。
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