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初恋
第2章 窓の向こうに


離してほしいと伝えると、嫌だと言う。


仕方がないので取り敢えず名前を尋ねると、わからないと言う。


どこから来たのか尋ねると、わからないと言う。


……このあたりで俺は、病室から出てきたことを後悔し始めた。


知らんふりしとけば、よかったなって。


当たり障りのない質問も続けても……



「歳は?」


「んー……。わからない。あなたは?」


「十六だけど」


「まぁすごい、大人ね!」



総じて、意味がわからない。


看護師を呼んで引き取ってもらおう。


俺は周囲を見渡した。でもこの寒い中、ここを散歩する患者なんてひとりもいなければ、それに付き添う看護師もいない。


そしてやっと、俺が迷惑しているのを察したのか


彼女の顔から笑顔が消えた。



「──…わたし、迷子なの」



すがるような声で、そう伝えてきた。




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