- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
初恋
第5章 君がくれたもの
目の前の君に見とれているうちに
俺は酷く、胸が痛んだ。
ついでに呼吸も苦しくなった。……まぁそうだよな。
もう生きてはいない君。
一年前に再び迷子になったらしい君は、とっくに死んでいる。たぶん車にでもひかれたんだろう。
すでに死んだ存在である君の姿は、誰にも見える筈がない。
なのに俺だけには見える。──ってことは
きっと……俺も もう。そういう意味なんだろう。
...コツン
「どうした の…また、怖い顔になってるよ…?」
君はさっきと同じように、俺におでこをぶつけてくる。
馬鹿。
人間はおでこじゃなくて、唇でするんだよって
君に教えてやってから、俺は君にキスをした。