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うつむきピーターパン
第1章 誘惑

真っ白な教室の机にうつぶせながら、一体自分とはどういう人間なのだろうかと考えた。
大学入学とともに大阪にやってきて、多くの学生やバイトの同僚などと出会った。
すぐに自分に敵意をむき出しにしてくる人や自分に優しくしてくれる人もいる。
多くの人に出会う中で最近では表面的に人に接することがうまくなったのではないかと思った。
決して相手に不快感を与えることなく斜め下から相手の自尊心をくすぐる。
小さい頃から気難しい父、母、そして兄の相手をしてきた自分には一種のそういった才能があるのかもしれないと思った。
才能といえば聞こえがいいが、実際は世間に対して臆病なだけなんだろうと良彦は思った。
自分が自分でいること、それがどんなに難しいことか。
そして本当の自分とは一体どんな自分なのか。
そして自分はこれからどう生きていきたいのか。
そんなことが頭の中に浮かんでは消え、講義の時間を溶かしていった。

