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***堕散る(おちる)***
第24章 step24十八段目…春
「さあ、まずは出来立ての湯葉を召し上がれ。
表面に出来ている膜が湯葉ですよ。まずはそのままで…」

膜をツンツンつついていたハルトが、ワタシが摘まんで引き揚げた湯葉がクシャッとなったのを見て、箸を一本膜の下に滑らせて、シーツを干すように拡げたまま掬い上げ、自慢気にゆらゆら見せてきた。

小鉢に取ってあら熱を冷まして頂く、豆腐よりミルクっぽい濃い味がした。

ハルトは箸で干したまま、フゥフゥ冷まして、裾の方からかぶり付く、ちょっとお行儀が悪いとハルトと女将さんを交互に見たが、女将さんは、『いいですよ』とにこやかに笑っていた。

「青臭いミルクの味だ。」

「そうですよ。豆のミルクですからね。」

「牛乳でも膜が出来るよね。」

ハルトが嬉しそうに言った。

それから生醤油、胡麻垂れとを味わった。

「もっとごそっと食べたいなぁ。」

ハルトは、膜が出来るのを待つのももどかしそうだった。

すると、女将さんが手元の器を開け、白い卵焼きのようなものを鍋に入れていく。

ハルトが器の中を覗こうとすると、ササッと蓋を閉めてしまう。
母子の攻防のやり取りのようで可笑しかった。


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