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***堕散る(おちる)***
第24章 step24十八段目…春
「こちらの棚は繁殖用の卵を孵化させているんです。有精卵なんですよ。」

「有精卵?」

「ひよこになるんですよ。食用の卵は雌鳥だけで産んでますが、これは雄鶏と掛け合わせるんです。

親鳥も繁殖させていかないとですからね。

でも不思議ですよね。ちゃんと命があるって分かっているようで、有精卵はこうやって温めるんですよ。
食用のは見向きもしないのにね。」

「へぇ〜女将さん、この卵を温めたらひよこが産まれるの?」

「そうですよ。10日ほどで孵化しますよ。」

「今日孵化しそうなのはいる?」

「あいにく…」

「ねぇ、もらって代わりに温めたら孵化する?」

「かなり難しいですよ?上手くいかなくて悲しい思いをされると思いますが。」

「ぜひ譲って欲しい。なんなら親鳥を買える代金をお支払いしますから、」

ハルトが雛に興味を持ったのは分かったけど、まさか孵化させたいと言い出すとは思わなかった。

「ハルトさん、お金で買えないものもあるんですよ。命はお金で買えません。

でも、

お二人と過ごして、私もとっても楽しかったから、もし、まだ卵を産んでないこの鶏が卵を産んだら差し上げましょう。


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