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***堕散る(おちる)***
第32章 step32 二十六段目 B2階 犬になる
王様は咳き込むワタシの背中を優しく撫でてくれ、一度抱えられたまま立ち上がり、またベッドに戻った。
どうやら食後の紅茶を飲んでいたらしく、ティーカップをワタシの口にあてがい、ゆっくりとお茶を飲ませてくれた。
「女の嫉妬は怖いな。少し休もう。」
それだけ言って、ワタシを抱えたままゴロンと横になった。
そのまま背中を撫でられて、急激な変化に戸惑うワタシは、疲れていたのか眠ってしまった。
ん…
気づくと王様のベッドで一人で寝ていた。
慌てて起きると、デスクに向かっている王様と目が合った。
「ああ、気づいたか、ユキ。おいで、これを着けてあげるから…」
王様の手には、慌てて出て外したままになっていた首輪があった。
突然のメイドの仕打ちに、優しく守ってくれたけど、やはり、犬にすると言ったことを取り下げるつもりはないらしい。
ワタシはうつ伏せに戻り、足からベッドを降り、そのまま四つん這いになって、王様の下(もと)に行った。
素直に近づいたワタシに、嬉しそうに微笑み、首輪が填められた。
「少し散歩をしようか。」
それは犬の姿で庭に出るということ…
素直にワンとは言えなかった。