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***堕散る(おちる)***
第32章 step32 二十六段目 B2階 犬になる
声を掛けると挨拶もせずに食べ始める。
それでいい。犬にマナーなど必要ないからな…
「いただきます。」
ユキが脇で食事するのを見ながら自分も食事した。
ユキが食べ終えて俺を見上げるので、肉をひと切れ与えると、俺の手のひらに口をつけ嬉しそうに食べた。
頭を撫で皿に水を注いでやろうとすると、皿にピルが残っていた。
「ユキ、これは飲まなきゃいけない薬だ。」
今までもピルは欠かさず朝食の皿に入れていたが、今日のように残すことはなかった。
飲むように言っても、ユキはきょとんとして飲もうとしない。
仕方ないので鼻を摘まんで無理矢理飲ませた。
もう、薬の効果や意義などに関心がなくなり、食事でない異物と判断したのだろう。
いい傾向だ。
嫌がりながら飲むユキを撫でて誉めてやった。
皿に水を注ぐとピチャピチャと舐めるユキ、顔を拭い目線を合わせて話しかけた。
「ユキ、熱も下がったし、もう一度これをつけるよ。
ユキが俺のペット、俺の犬という印だ。」
首輪を見せると舌を出して嬉しそうにした。
「じゃあ散歩にしようか。」
部屋を出るとおとなしくユキはついてきた。