この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
***堕散る(おちる)***
第34章 step34 二十八段目 B4階 約束の日
延長した期限の日が来た。
ユキはいつもと変わらずフェラで俺を起こす。
そしていつもと変わらない1日が始まった。
「散歩に行こうか。」
食事を終えたユキと庭に出る。
4月に入り一段と暖かい日だった。
温室にいっても、チューリップを揺らして遊ぶだけで、花を選ぶこと、切って飾ることには全く興味を示さなかった。
包帯が無くても立つこともなく、指先は丸まったままで、花を掴むこともしない。
ユキは茎を拳で突いて揺れる花の花弁を覗いたり、顔に当たる花に頬を寄せて遊んでいた。
「ユキ、ここが好きか?」
ワン…
「花が好きか?」
ワン…
ここを、温室という意味で訊いたが、屋敷という意味で捉えたか、言葉も思考もないユキにそれ以上を訊くのは不可能だった。
ずっと屋敷に置いておいてもよい。
これだけ上玉の犬なら高い値で売れるだろう。
俺からアイツに連絡するつもりはなかった。
どこから入ってきたのか、つがいのシジミ蝶が戯れながら舞っていた。
ひらひらと儚げに…
「桜みたいだな。」
ピクン…
その言葉にユキが反応し、蝶をずっと目で追いかけていた。
そういえば桜の木があるか気にしてたな。