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***堕散る(おちる)***
第34章 step34 二十八段目 B4階 約束の日
サ…サ…
ユキは蝶を示して『サ…』と言っていた。
蝶を桜と覚えてしまったようだが、ひらひらと舞う姿をずっと見つめていた。
何か桜に想いがあるのだろうか…
ここに来る前のユキのことはわからない。
アイツとの想い出でもあるのかもしれない。
偶然だが蝶がユキの髪に停まる。
サ…サ…
見えなくなってしまった蝶を探しているようだ。
「ユキの髪に停まって休憩してるよ。
簪(かんざし)みたいだな。綺麗だ。」
サ…サ…
ユキは蝶が髪に停まっていることに気づかず、理解できていないようだった。
しばらく温室で遊び庭に出る。
契約期間が来たことを皆知っていて、最後にもう一度と狙っているのだ。
「乗馬をしてくるから、ユキと遊んでやってくれ。」
庭師たちに声をかけ、ユキを好きにさせた。
馬場から戻ってくれば、何人もの男を相手にしていたが、名を呼べば俺についてくる。
ガラス扉から入れば、いつものようにメイドたちが足を洗ってくれた。
「ユキ様がずっとここにいてくださればいいのに…」
ユキの足洗い専属となっていたメイドが言った。
だがユキはこれといった反応は示さず廊下に上がった。