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***堕散る(おちる)***
第34章 step34 二十八段目 B4階 約束の日
「うん、これでルリらしくなったな。」
髪を掬ってそこに口づける。
ルリらしいという意味が通じなかったのか、ルリはきょとんとしていた。
「ルリ、手は使わずにこうやって歩いてごらん?」
床に膝をつけていざるように歩いてみせると、ルリは真似をしてソファーまで進んだ。
「そして椅子にはこうやって座る。」
背もたれに寄りかかって座れば、それもできた。
「うん、それでいい。ルリは犬じゃないんだから、これからはこうしようね。」
ワン…
理解してもらえたようで、伏せずに普通に座っていた。
買い物に行くつもりでいて食材や、今のルリに必要なものがない。
とても留守番などさせられない。
俺はヤスジに電話して買い物を頼んだ。
「ああ、悪いが玄関の前に置いていってもらえないか…
ああ、大丈夫だ。外出できないだけで、後のことは一人で出来る。
ありがとう、また頼むと思う。」
ヤスジは役員の中で一番自由がきく、そして俺に忠実だ。
おやっさんやせがれには頼りたくない。
ヤスジはルリのことを心配し手伝いまでかってでたが、今のルリを誰にも見せたくない。
荷物も玄関先に置いてもらうことにした。