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***堕散る(おちる)***
第34章 step34 二十八段目 B4階 約束の日
ルリは人差し指を伸ばそうとしていたし、喋る努力をする。
うん、トランプをして正解だった。
「ん〜、たしか7はここにあったはずだ。」
あえてなるべく声にしていく。
俺が揃えるとルリは嬉しそうだった。
「こぇ…」
「ルリ、そこさっきも開けて、3だったぞ?
旅行の時もそうだったけど、ルリは暗記が苦手かな?」
ルリがまたきょとんとする。
「去年、旅行先でこれをやって、トランプ初めてだった俺が勝っただろう?」
ルリは不思議そうな顔をする。
「旅行のこと、覚えてないか?」
ぅぅ…
「卵を譲ってもらって、孵してぴよちゃんが生まれただろう?」
ぅぅ…ワンワン…
「そっか、忘れちゃったか、忙しかったもんな。」
ワン…
正直ショックだった。トランプのルールは覚えていた。でも旅行の記憶もぴよちゃんの誕生もわからない様子だった。
そう思えば、ルリが返事をせずに考えこむのは、俺たちの思い出や記憶に関する話の時だ。
言葉が話せなくなっただけじゃなくて、記憶も欠けているのか?
どこから、どこまで…
今、ルリは誰かわからない奴と一緒にいるって思ってるのか?
問い詰めてはいけない…