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***堕散る(おちる)***
第34章 step34 二十八段目 B4階 約束の日
焦らせてはいけない。
俺だって記憶がない部分はある。
新しくやり直すつもりでいればいい。
ルリに動揺を察知されないように、平静を装いゲームを続けた。
でもたぶん俺の考えは当たっている。
珈琲ミルの音にも驚いていたし、トイレの場所も探していたじゃないか。
ピンポーン…
ヤスジがエントランスの呼鈴を鳴らす。
ルリは耳慣れない音に怯えた。
ヤスジに会わせたらどうなのか…
俺との記憶がないだけか、とりあえず旅行あたりからの記憶がないのか…
気になったが、焦ってはいけない。
ヤスジには玄関先に荷物を置くように言ってエントランスのロックを解除した。
怯えるルリのそばにいき、背中を撫でる。
「大丈夫だよ、ルリ、買い物の荷物が届いただけだ。」
擦り寄るような仕草をするので、ルリの背中の後ろに回り抱き締めた。
ルリが落ち着くのを待って玄関に行くとルリもいざって着いてくる。
玄関を開けて、荷物を取り込みルリに見せる。
「ほらね。買い物が届いただけだ。」
ワン…
ルリも状況がわかって安心したようだ。
ゲームを中断して荷物を片付ける。