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***堕散る(おちる)***
第35章 step35 二十九段目 0ポイント
「ぴよちゃんが卵を産むのをみて、それにルリが感動したのを見て、俺も泣いたんだな。

ルリ、俺たちは、あの卵のように、今日生まれたんだ。」

ダイニングテーブルの卵を指差すと、ルリは振り返って一瞥し、また俺を見る。

「きょう、うまぇた。」

ルリの方から俺に抱き着いてきた。そして俺の唇に自分の唇を重ねてきた。

「そう、今日、生まれたの…
俺とルリ…」

「はうと…と…ワタ…シ」

「ゆっくりでいい。二人の時間を増やしていこう?」

ワ…

ルリが鳴いて返事しようと開いた唇に人差し指を渡らせて止める。

「ルリ、もう、ワンはおしまいだ。
はいとかうんで返事できるでしょう?」

「……は…い…」

ルリの唇が震え、ゆっくりと返事した。

これは右京から与えられた咎めだ。右京は3つの言葉のルールを決めてルリに強要した。

だから、鳴く回数の意味を俺に説明できたんだ。

ルリは犬にならないといけないという強迫観念に囚われるような仕打ちをされた。

だから言葉を発することを体が拒むんだ。

「もう、ルリに犬になれと言う奴はいない。
出来ないことはゆっくり出来るようにすればいい。でも犬になろうとしちゃいけない。」
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