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***堕散る(おちる)***
第35章 step35 二十九段目 0ポイント
「俺が一気に落として右京に引き渡したからか?」
「そうね。彼女には貴方を信じるという意識が元々なかった。つまり訓練中の期間ね。」
「元々?」
「そうよ、元々騙されてるとか、信じなきゃという意識がなかったのよ。
それほど、貴方を思って貴方が全てだった。違う?」
「ああ、訓練中、役員たちと関係を持たせても、何も文句も言わないし、俺を疑うこともなかった。」
「そこから一気に落とされて、疑う間もなく右京に調教された。
右京の調教に馴染んで、犬になることで、貴方を疑う気持ちも何も封じたのよ。
だから、記憶が戻ったら、違う期間の記憶が消えるか、
もしくは貴方を受け入れられないか、
もっと壊れてしまうかもしれないわよ。
それ以上は医者でないとわからないけど…
いいえ、人の心なんて医者でもわからないかもしれないわね。」
「それで、俺は、どうすればいい?」
「母親との記憶があるうちに、返してあげるというのも一つかもしれないわね。」
「返す?ルリは俺のもんだ。」
「それは貴方の気持ち、心よね。
貴方自身も自分と向き合う必要があるわね。
でも、完全に貴方を忘れてしまうかもしれないって覚悟は必要よ。」