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***堕散る(おちる)***
第35章 step35 二十九段目 0ポイント
そして、小一時間、ルリがゆっくりしか話せないとして、それにしても長い。
逆にルリの言葉がエミにわかるのだろうか、エミが一方的に話してるのではないか?
それとも、ルリが喋れずに、エミが引き出すのに時間がかかってるのではないか?
ガラスの大きな灰皿に吸殻が山盛りになり始めていた。
「お待たせ、って、火事?」
「いや?煙だけだが?」
「あははっ…待つ身は辛いわね。」
「だいぶ気が長くなったと思うが?」
「そのようね。結論から言えば、心因性の失語症ね。」
「失語症…」
「彼女自身が自分でブレーキを掛けてるのよ。
そして、貴方にはどうすることも出来ないわ。
私に見立ててもらおうと考えた通り、当事者同士で解決する方法はないわ。」
「じゃあ俺は…」
「何も手を貸すことは出来ない。今まで通り、気長に待つしかないわ。」
「そうか…」
「それと、記憶障害もあるわね。それも彼女自身の問題。
たぶん、貴方と最初に出会う前、出会ってから右京のところに行くまで、右京のところでの生活、そこから貴方が連れ帰ってから、4つの記憶に分断されている。
そして2つ目と3つ目の記憶は全くと言っていいほどないわ。」