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***堕散る(おちる)***
第38章 step38 三十二段目 踊り場

「ルリ、昨日聞くはずだった人魚姫の話を聞かせて?」

「え…はい…」

今日1日は家でのんびり過ごした。

食事を一緒に作って食べて、近くの公園にぴよちゃんも連れていき、ブランコから飛び降りる芸を見せた。

ルリは母親のことや、俺との関係、仕事や研修のこと、
母親との会話で記憶のない部分で聞かされたことが、気になっているようだった。

失った記憶の補完はしないと言ってあるから、直接尋ねてくることはないが、
何かを言いかけて口を閉ざしたりするので、
つい、訊いてしまいたくなるのだろう。

ルリの今の仕事は、俺と一緒にいることなんだとだけ伝えて1日を過ごした。

互いに焦ってしまってるのだろう。記憶の鍵探しと補完に…

ルリが昼寝をする間に、旅行の計画を練る。
と言っても、ただパソコンを眺めているだけで、これといって浮かぶものがなかった。

「海深くに棲む人魚の姫がいました。歌の上手な姫でした。
ある嵐の晩、船が遭難して海に投げ出された男を人魚姫が助けます。

陸まで連れていったその男に人魚姫は恋してしまいました。」

「また、恋愛ものかぁ…」


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