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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
「うん…それは嫌だね。」
「犬は手を使っちゃいけないって、指を折り曲げて包帯で巻かれて…
お皿に顔をつけて食べるしかなくて…
でも、だんだんどうでもよくなって…
ご飯の時間だけが楽しみで…
王様が食後に汚くなった顔を拭いてくれるのをありがたいと思うようになってた。
そして、今みたいにノックがあるのを楽しみにしてた。」
「王様の顔は思い出した?」
「いいえ、入ってくる人の顔も…
ぼやけてて…
テーブルや絨毯やご飯しか見てなかった。」
「そうか…そこに行かせたのは俺だ。ルリがどんな仕打ちを受けるのかも知らずに…預けた。
すまない。」
「ハルト…もう過ぎたこと…ハルトも…いっぱい…苦しんだから…もういいの…
それよりハルトとの記憶が戻って欲しい。」
「ん…本当に悪かった。
ルリ…ご飯食べれる?」
「はい。さっきノックの音で、話した映像が浮かんだけど、もう消えたし頭もクラクラしないです。」
「じゃあ、食べようか。」
「はい、」
ルリの席までついていくと、何ともないから大丈夫だと言われた。
ビールと食前酒のグラスをぶつける。
何と言っていいか迷ったら、ルリが乾杯と言うので遅れて言った。