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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
浴衣を羽織り窓際の籐椅子でのんびりして食事を待つ。
山の夕日はすぐに沈んでしまった。
コンコン…
「失礼します。お食事のご用意ができました。」
仲居がお膳を運んでくる。ルリの反応がおかしく、震えているように見えた。
仲居が料理を並べていく、そして出ていくまで無言だった。
「何かご注文ございましたら、内線電話でお申し付けください。」
あの女将のようにずっと部屋に付き添うのではないようだ。
そしてルリの様子から、嫌な記憶を思い出したようだった。
旅館の女将の記憶ではなさそうだった。
「ルリ…大丈夫か?」
「え…ぁ、はい。」
ルリはぼうっとしていた。
「は、ハルト…ワタシ、犬だった時、大きなお屋敷の一つの部屋に飼われてました。いつも、食事が運ばれてきて…
王様に『待て』と言われて…
王様が蓋を開けてくれるのを待ってました。」
ルリが話しながらぶるぶる震え出す。
俺はルリと向き合うように自分の膝の上にルリを乗せて抱き締めた。
「ご飯が、おかずも何もかも一つのお皿に入ってて、ご馳走なのに、おかずの味がご飯にしみていたりして…
色んな味が混ざってしまってた。」