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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
離れが遠い分、来るのも遅く、俺はご飯の蓋を開けた。
「何だこれ…米に線が入って潰れてる。」
ルリも覗く。
「何でしょうね。お米じゃないみたいですね。」
コンコン…
ルリがビクッとしたので手を伸ばしてルリの手に重ねた。
「お代わりをお持ちしました。」
「ねぇねぇ、ご飯のこの線が入っているの何?」
「あっ、麦を混ぜてます。麦飯といって、とろろ芋をかけて、麦とろ飯と呼ぶんです。
牛タンとの相性もいいし、栄養のバランスもいいと、昔からこの組み合わせで食べていたようですよ。」
「へぇ〜、米じゃなくて麦なんだ。」
「米と混ぜてますけどね。」
「ん、んまぃ。」
ハルトが牛タンを食べて慌てて、麦とろ飯をかけ込んでから満足していた。
嫌な記憶を思い出してもハルトとなら乗り越えていける。そう思った。
牛タンのお代わりを食べ、ハルトはもう一度お代わりして食事を済ませた。
「腹ごなしに庭でも散歩するか…」
「はい。」
とは言っても外は真っ暗だった。
下駄を履きハルトと手を繋いであるく。
今のワタシはこんな状態だ。記憶のない暗闇をハルトに手を引かれて歩いている。
しっかりと繋がれた手を握り返した。