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***堕散る(おちる)***
第39章 step39 三十三段目 屋上へ
「はい、どっこい、じゃんじゃん〜」
「ハルト、まだ食べるんですか?」
「ああ、天ぷらとだと、また美味い。ズズッ…」
「はい、どっこい、じゃんじゃん〜」
「もう一段お願いします。」
「まあ、沢山食べてもらうんは、嬉しいね。」
おばちゃんが笑いながらベルを鳴らす。
本当に腹いっぱいになるまで食べた。
「卵焼きも美味いなぁ、ルリの卵焼きの次に美味い。」
「そ、そんなことないです。」
「そんなことあるさぁ、お嬢さんの作るのには、愛情がたっぷり入っているんだから、いくら店のでも勝てないね。」
「愛情?」
何故かハルトが聞き直す。
「そうだよ、大事な人に美味しく食べてもらいたい。その愛情がいっぱい詰まってるんだから、勝てっこないさぁ。」
ルリを見れば、俯いて真っ赤な顔をしている。
愛情…
アイツの作った料理など食べたことがなかった。
『お母さんの愛情のこもったお弁当、残さず食べるのよ』
遠足の時、先生が言ってたっけ、愛情って日常に溢れているもんなんだな。
おばちゃんの何気ない一言に気付かされた。
ルリはまだ下を俯いていたが、その様子を愛おしいと感じた。