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第3章 真夜中のプリンセス・ベル

　彼がパチンと指を鳴らすと、静けさが満ちたホールに突然、音楽が流れ始めた。その音にロザリナは現に引き戻される。

　いつのまにか小さな楽団が広間の片隅に出現している。

「踊ろう」

　トーマスはロザリナの肩を抱き、腰に手を回した。

「トーマス、私、踊りなんて」


　上流社会に属しているわけでもなく、貴族でもない自分は踊りなんてしたことはない。せいぜいダンスといえば、小学校の運動会で踊った創作ダンス程度でしかない。