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キスをして
第5章 小塚の本領
スマホをデスクに置いて橘さんと階下に向かった。

積み込みを終えると朝まで仕事をするらしい橘さんは煙草を買いに行ってしまい一人でエレベーターに戻ると見覚えのある背格好が見えた。

「お疲れ様です」

「あ、おつかれさまです」

昨日スルーされてしまったから余計な話はしないでいようと思ったら沈黙を破ったのは向こうだった。

「あの、昨日の財布‥良かったら貰って下さい」

「でも、商品じゃないんですか?」

「違うんです、アレはサンプルだったやつで」

「じゃあ貰います」

「今度持って行きますね」

「ありがとうございます」

貰えるなら貰っておこうと思って約束はしたが会社まで持ってくるのだろうか?

デスクに戻ってから40分程仕事はしたが今日中には結局ノルマは終わりそうになくて明日出勤をしようと荷物を鞄に詰めていく。
駅まで走っても終電にはギリギリになりそうな時間に少し焦っている。

気付けば眞木君もいつの間にやら居なくなり事務所に残るは橘さんと日下さんだけになっている。

「終わったのか?」

「まだですけど明日出勤しますよ」

「もう少しならやっていけば?タクシー代出るよ」

「そうだぞ~りっちゃん、他の社員居ないんだから別にいいんだよ。俺ら3人は他の奴より受け持ち多い―」

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