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キスをして
第2章 間宮と小塚
「お待たせしました」

「大丈夫ですよ」っと言いながらスマホから顔を上げいつもの笑顔を向けると歩き始めた。
慌ててついて行くと歩幅を合わせてくれる。

「間宮さん、夕飯食べて帰りませんか?」

そう言いながらタクシーを停めた。この時点で私に拒否権などない気がする。いつも選択肢を与えてはくれるけど目が笑ってないんだよね‥この人。

「間宮さん、どうぞ先に」

私を半ば強引にタクシーに押し入れて自宅近くの商店街の名前を伝えた。

今タクシーに乗るならなんで行きにどっちが良いかなんて聞いたんだろう。

「行くときはどっち選ぶのかなぁと純粋に思ったんですけど帰りは時間が6時半を過ぎているので少しでも早くと思って勝手にタクシーにしましたけど大丈夫ですよね?」

考えていたことの返事がタイミング良く発せられ思わず驚いてしまった。

それより『大丈夫?』とは?

「こ、小塚さんは仕事してたからお腹空きますよね」

「それもありますが、いつも間宮さんと呑むときは夜遅くてゆっくり飲めないので今日位は思っただけです」

タクシーは商店街を通りロータリーを抜ける少しすると小さなライトがついた木造の門扉の前で止まった。
小塚さんは門扉を開け入っていく。

「こんなお店あったんですね」

「2年位前に出来たんですよ?間宮さん仕事忙しそうだったから知らないかなぁと思って」

小さな庭園を抜けたところにある日本家屋に入ると腰に黒いエプロンをした男性が近付いてきた。

「いらっしゃいませ。小塚さんお久しぶりです。席までご案内します」

古い建物を改装したのか土間から繋がった廊下を通って突き当たりを曲がると一番奥の部屋に案内される。
オレンジ色の間接照明に照らされた廊下は漆喰で塗られた壁によく映えて落ち着いた雰囲気を出している。

ヒールを脱いで通された和室に入ると右手に清廉された日本庭園の中庭が見える。4畳半の部屋の中央にあるテーブルに二人分の座布団とお皿がセットされていた。
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