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キスをして
第6章 間宮の逆襲
今日は金曜日。
終電までには帰れそうだから良いけど小塚さんは本当に迎えに来るから困る。
デザイン部のメンバーは食べ物で餌付けされてしまっているせいで小塚さんの来訪を待ち望んでいる。

こんな時まで一致団結しなくていいんだよ。
全く私の味方は居ないのかしら。

仕事を終えたのは21時過ぎ。今から帰れば人通りもチラホラあるから徒歩でも大丈夫そうだ。
他の仕事に捕まる前にと急いで会社を出ると社に戻ってきただろう営業帰りの黒沢さんと出くわした。

「お疲れ様です。黒沢さん」

「上がりか?」

「はい、お先です」

「律香っ俺ももう上がりだから駐車場で待ってろ」

歩き出した矢先に呼び止められた。

「話しがある」

話は前のエレベーターでの続きだろうか。
二人になる暇がなかった事もあってずっと怒らせたことを謝れないで居たから丁度良いかもしれない。

駐車場の出入り口に回り花壇に座っていると黒沢さんの黒いSUVが目の前で停車する。

「乗って」

車に乗ると昔と変わらず後部座席には仕事道具が散乱している。

「何も言うな、分かってる」

「うん。ちょっとくらい片づけた方が良いと思う」

「だから言うなって言っただろ」

頭を小突きながら窘める黒沢さんは仕事中とは違って柔和な顔になる。

「飯食べた?何か食べ行く?」

「接待はどんなとこ行くの?」

「空いてるか訊くからちょっと待て」

スマホを取り出してどこかに電話をしている間に体を伸ばして後部座席のばらついた書類をまとめていく。

「空いてるって」

私から書類を取り上げると車を発進させた。
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