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キスをして
第6章 間宮の逆襲
「こっち」

着いた先は何だかお高そうなお店で気が引ける。

「何の店?」

「会員制の居酒屋」

「よく急に入れたね」

「オーナーが知り合いなんだ」

暖簾をくぐると格子戸があり中に入ると綺麗な着物を着た女の人が出迎えてくれる。部屋に案内しながら黒沢さんと雑談してるって事は常連なんだろうか。

料理に舌鼓を打ちながらグラスビールを口に運ぶ。1人で呑んで悪い気もするけど頼んでくれたのは黒沢さんだし遠慮なく飲む。

「ちゃんと生活してるか?」

「出来てるよ」

「そう言いながらどうせ昼まで寝て冷凍食品で食いつないでるだろ」

「最近の冷凍食品は優秀なのよ」

「やっぱりじゃねぇかよ!」

「昔から世話焼きすぎなのっ、そんな事ばっかりしてるからおばちゃん扱いされたんだよ」

「それ大学時代の話だろうがっ!卒論してるときに部屋で行き倒れたのは誰だったっけか!?」

「その節は大変感謝しております。黒沢セ~ンパイ?」

「思ってねぇだろ」

大学時代2歳上の黒沢さんは私を何かと可愛がってくれ今の事務所のバイトを斡旋してくれた。
そのおかげで就職に困ることもなくアシスタント期間も短く済んだ。
仕事を始める前までは生活力の低い私の世話役をかって出てまともな生活をさせてくれる仲のいい友人としてずっと一緒にいた。
気付けばそんな関係は変わってしまったけど居心地の良さは変わらない。
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