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キスをして
第6章 間宮の逆襲
「渡したい物?」

「デザイン科のアトリエ覚えてるか?」

「大学の近くのアパートでしょ?覚えてるよ」

「あそこを片付けようと思って整理してたら律香のアルバム見つけてさ。昔探してたろ」

探してたのは在学中の頃だったのにそんな前の事覚えてたんだ。
私すら忘れてたのに。

着いた先は黒沢さんのマンションで車で待つように言われたけど人の車で待つのも気が引けて後を付いて行く事にした。
ここに来るのは別れた以来だから1年以上前になる。5階にある部屋はあの頃と何も変わらない。

玄関で座って黒沢さんを待つ。
付き合う前は気にせず中に入っていたけど別れた今、同じようには戻れない。
態度を変えることなく接してくれる黒沢さんに感謝している。社内でも居心地が悪くならないように皆と同じように話しかけてくれる。

優しさなのだと思う。嫌いで別れた訳じゃないからこそそうできるのかもしれない。『友達に戻りたい』先に言ったのは私だった。プライベートでいる時間が少なくて擦れ違っていけば嫌いになってしまうかもしれないと思ったから。
嫌いになりたくなかったし、嫌いになって欲しくなかった。
一緒に居た頃があまりにも楽しくて居心地が良くてそんな居場所を失いたくなかったのかもしれない。

それなのに変に線を引いているのは私なのだけど。

「律香?どうした?」

「え?ううん、何でもない。ありがとうアルバム」

黒沢さんからアルバムを受け取って2人で車に向かった。

車に乗り込んで時間を見ればもう1時になりかけている。

「遅くなって悪かったな」

「気にしないで。別に帰っても一人なんだから」

「彼氏は?」

「いないよ」

「本当に?あのバイクの男は?」

「だから近所の人だって」

今嫌な言い方しちゃった。せっかくさっき仲直りしたのにまた繰り返してしまう。
どうして黒沢さんも同じ事聞くの?
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