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キスをして
第7章 小塚の憂い
「貴方の部下素直じゃなさ過ぎます」

『気長に付き合ってやって?パニクってるだけだからさ』

「どうして俺に言うんです?」

『間宮は小塚さんにはあたふたするんだなと思ってさ。だから頼むわ』

通話の終了したスマホを間宮さんに返すと不安げな顔で見ている。
やっぱり何か知ってるなあの人…。

「橘さんとはすごく仲良いんだね」

「あ…まぁそうですね」

「―そっか。橘さん位に何でも話してくれるようになってくれると嬉しいんだけどね」

間宮さんは相変わらず目を合わせようとしない。
何か後ろめたいことでもあるような態度は初めてだ。橘さんや日下さんはあの様子だと何度も見たことがあるんだろう。

車を走らせながら間宮さんにドリンクを渡せばしっかりと受け取ってはくれるしお礼も言ってくれる。
橘さんからの電話では大きな声が出せる位に落ち着いていたみたいだが俺にだけこの態度なのは一体どういうことだ?

小塚さんは何を話したんだろう。
橘さんだから余計な事は言っていないと思うけど失礼な態度しか取っていないはずの私に変わらず笑いかけてくれている。

『甘えとけば?』

そんな事言われても何て切り出せばいいのか分からない。
簡単じゃないよ…。

そんな事を考えていたら車は海へ走っている。しばらく進むと大きな駐車場に停車した。

「別に海を見ようと来たんじゃないよ?こんな時期の海なんて寒いだけだしね。俺はそんな気障っぽいこと似合うタイプじゃないし」

「……」

「あんまり沈黙貫かれると俺も傷つくよ?結構繊細なんだからさ」

「……繊細……には見えないけど」

「ツッコむところそこ?」
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