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キスをして
第7章 小塚の憂い
「してたよ。あのさ違うからね。スイスに居るときに誰かの誕生日がくる度に作らされてただけだから」

「なんだ彼女じゃないんですか」

「間宮さん」

「何!?なに!?」

グイッといきなり顔を挟まれて向かされた顔を無言でまじまじと覗かれる。
余りに真剣に見るから視線を反らすことも出来ない。

「口とは違って顔は素直だよね」

「なんですかっそれぇ!」

「彼女じゃないことがつまらなさそうに言うから何かと思えばちょっと嬉しそうにしてる」

「してません!!」

「認めたくないの?それとも恥ずかしいだけ?」

―――!!!

「ふっ‥赤くなった。可愛いね」

そう言いながら唇を額に落としてクリームを再度泡立たせ始める。
結局ひとりでくるくると回しながら器用に仕上げられたケーキは素人がしたようには見えない出来だ。

小さめに切り分けられたケーキをコーヒーと一緒にリビングに運ぶ。

「さすがにバースデーソングとか歌う趣味ないよ」

「引くんでやめて下さい」

「はははっ確かに。では誕生日おめでとうございます」

「えっと‥ありがとうございます」

小さめに切られたショートケーキはふわふわで優しい甘さが口に広がる。
手作りケーキを最後に食べたのは小学校の調理実習が最後じゃないだろうか。
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