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キスをして
第8章 二人の関係
きつく閉じた眼を恐々と開けると見たことのない黒のミリタリージャケットに戸惑うがそのまま顔を上げればいつものにこやかな笑顔が私に向けられている。

……何で?

「小‥塚さん?」

「場所が‥分からなくて隠れる場所が見つからないからどこかに連れて行かれたんじゃないかと思ったんだ。駅の外なんじゃないかと思って外に行こうとしたら盛大な罵声が聞こえたから助かったよ。人があまり通らなさそうな階段にトイレがあるなんて思わなかったからね」

独り言みたいに呟くように話し続けている小塚さんに声の掛けようがない。

「こんな事されたら腹も立つよね。でもさ逆上させてどうする」

「だ‥だって段々ムカついてきて」

「お陰で殴られるところだったんだぞ!」

「黙ってても蹴られたわよっ!!」

「………」

グシャッ

私の一言が仇になって最初の一撃で顔を押さえてうずくまっている彼が小塚さんにとどめと言わんばかりに足で顔を床に擦り付けられているのが気の毒に思えてくる。

………小塚さんって怒ると加減がないんですね。

「間宮!!っおおぅ‥小塚さんやりすぎじゃないっすか?」

「大丈夫です。後始末は知り合いに頼みますから」

「後始末って……あ~‥間宮怪我は?」

「少し擦りむいたのと左腕蹴られて‥でも骨とか大丈夫ですからっ」

「痛みが続くなら病院行けよ。会社は暫く休んで良いから」

「でも!」

仕事が立て込んでいる今休みなんて取る余裕なんてないのは分かってる。私が休むわけにはいかない。
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