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キスをして
第8章 二人の関係
身体が一気に冷めていく。
冷え切った体は私の意志とは関係なく震えだし私を硬直させていく。

クローゼットに触れた手を動かせない。
遠くから私を呼ぶ小塚さんの声がする。
だめ…こえが…
声を出せば嗚咽まで込み上がってしまいそう。

「間宮さん!」

不意に私の手を包む大きな手の温もりに身体の力が抜けていく。
私が崩れ落ちないようにゆっくりと体を落とす。

「大丈夫ゆっくり息をして‥何も言わなくて良いから。ごめん、一人はまだ恐いね…泣いたらすっきりするから、気にせず泣いて良いよ」

優しく背中をさする手に涙が溢れ始めると堰を切ったように次から次にスカートにシミを作っていく。
自分で思っていた以上に私は恐怖を感じ怯えていたんだと自覚した。

どの位そうしていたのか私の感情が落ち着いた頃チャイムが鳴り響いた。

「見てくるよ」

扉を開けたままにして玄関に向かって行った。どうやら橘さんが私の荷物や書類を持ってきてくれたらしい。
一人になるとどうしても不安になってしまう。ペタペタと冷たい床を裸足で歩き玄関に続くドアの前に行くと丁度帰ったところだったらしくドアが手を伸ばすより先に開いた。

「どうしてスリッパ履かないのかな。足冷たくなるよ?」

私の寝室までスリッパを取りに行こうと背を向ける小塚さんを引き留めたくて腰に腕を巻き付けた。
私の手にそっと重ねられた手に不安が解れていく。それなのに私を引き離そうとするからきつく抱き付く。

「少し横になった方が良いよ?」

「一緒がいいです」

「隣にいるから」

「そうじゃなくて‥」

「俺が横に寝るだけで済まなくなるから」

私は重ねられた手に指を絡めた。
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