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キスをして
第8章 二人の関係
少し困ったように振り返ったが私の首に腕を回して頭に唇を落とした。

どうしよう。
今すごく無性にキスがしたい。
頭に触れた唇の柔らかさが唇に触れるのを想像する。
皆こんなにも苦しくて切なくなるくらいに愛おしいと思ってキスがしたいと思っていたのだろうか。

見上げれば身体を引き上げられてつま先で立つ私を優しく抱き締めながら私と同じ様に切なそうな顔で私を見ている。
小塚さんの冷えた首筋が頬に触れ、小塚さんの香りが私を包む。
項に当たる息だけで私の熱が上がっていく。

ベッドに移動して私を座らせ私の前にしゃがみ込み優しく私の手の甲にキスをして指先を口に含む。
眼を閉じれば指に絡む舌が私の口内で動いている錯覚に陥る。
息苦しい‥息が上がってくる。
こんなにも身体に触れるのに私の唇に触れはしない。

自分の気持ちを伝えてしまえば良いだけのことかもしれない。
それなのにもっと良く思われたいと欲がでてしまう。何より私は貴幸にちゃんと言うべき事が言えていない。
アレが私に気付かせようとしてくれたことだったとしてもそんな理由であんな態度をする人じゃないと思っている。
中途半端にしたまま私は小塚さんに何も伝えられない。

「何を‥考えてるの?」

「!!」

この人は私を急かさない。いつも私が整理できるのを待ってくれている。
それは小塚さんの優しさだけど私はその優しさに甘えすぎちゃ駄目だ。じゃなきゃ私はまた同じことを繰り返してしまう。

「ごめんなさい‥私小塚さんに言いたいことがあるんです‥でも、自分の中でちゃんと整理出来てなくて」

「待ってるよ」

ゆっくりで良いからそう言って私を静かに抱き締めて一緒にベッドに潜った。

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