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キスをして
第8章 二人の関係
「何ともなくて良かったね」

「はい。すみません病院に付き合ってもらってしまって」

「だから、そんな遠慮しないの」

「だって最近まともにお店開けてないんじゃないですか?」

「大丈夫だよ。心配しないで」

小塚さんに連れられて病院を出た頃には12時を過ぎていた。
小塚さんの自宅に着いた頃には橘さんに日下さん、眞木君から心配とちゃっかり仕事のメールまで入れてくれていた。
そして1時間置きに映し出される黒沢の文字。

「会社の人?電話するならして良いよ?」

「大丈夫です。後で連絡します」

私の隣で作業台に向かう小塚さんの側で電話する気にもなれないし席を外して電話すれば勘のいいこの人にはすぐにバレてしまう。
橘さんから何か聞いたのかは分からないけど仕事のことだったら留守電に入れるはずだからプライベートだろう事は分かる。

作業場の座敷に作られた私の仕事スペースに座り込んで作業に向かう。
2階の和室ですると言ったのに夜中でも作業しそうだからと却下され小塚さんの側を余儀なくされてしまっている。
ずっと仕事していれば考えなくて済みそうなのに。逃げられない状況にどうするべきが結論が出せない。

思うように作業が進まないまま気付けば閉店時間になっていて閉店作業を終えた小塚さんは夕飯の準備をする為に作業場を出て行った。
すぐに黒沢さんの履歴を出してコールを鳴らす。

『律香?何があった』

「大丈夫だよ」

『大丈夫な訳ないだろ橘さんが体調不良なんて言ってたけど、お前は点滴打っても仕事するだろうが』

「話したいことあるの」

『この後一件行くところがある。20時には終わるからその後は?』

「分かった」

『今出先?』

「家だよ」

『嘘だな。声のトーンが違う。』
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