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キスをして
第9章 小塚の本懐
私の言葉に怒る気も失せたのか深い溜息を吐いてしゃがみ込んでしまった。
何だか気の毒にも思えて覚束ない足で誠司に近付いてしゃがみ込む。

「大丈夫?ごめんね?」

「後で文句言って良い?」

「ん~優し目でね?私も言って良い?」

「同じく優し目で頼むね」

「嫌」

私の一言に目を見開いて顔を横に背けてしまった誠司に笑顔だけを向けておく。

「仲良さげにすんのいいけどこっちは居心地悪いんですけど~?」

「黒沢さんありがとね」

「良いよ。この立ち位置慣れてるから」

誠司を立たせて車に向かうように背中を押して黒沢さんに背を向けた。

「あ!律香っ」

「何?」

「お前にとっての俺って何?」

私に取っての黒沢さん‥。
元彼?相談相手?先輩?同僚?
多分どれも違う。強いて言うなら…

「バカな友人」

私の一言に高らかに笑いながら手を振ってくれる黒沢さんを置いて車に乗り込んで発進して貰った。

――――

「いつまで隠れてんだよ」

「殴り合いでもするのかと思っちゃいましたよ」

ビルの隙間から顔を出した佐伯は顔が真っ白だ。よくこんな寒い中じっとしてられたなと感心する。

「慰めて上げましょうか」

「嬉しそうに言うな」

「嬉しいですよ?黒沢さんがちゃんと諦めてくれたから」
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