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キスをして
第10章 珍事と感傷
年を越そうとする30分前。約束通りお節をもって現れた誠司を皆で歓迎する。
現れたお節は私たちの予想を遙かに越える出来で買うと5万円位取られそうだ。

「小塚さん。りっちゃんに尻に敷かれてるんですか?」

「まさか餌付けしてるんですよ」

「‥グッジョブ!りっちゃん!!」

「はい?なんですか急に」

「って言うか日下さん年越してないのになに食べようとしてるんですか!?」

「堅い事言うなよ~眞木~小塚さんはどうぞって言ってるぞ?」

「言ってないですよ!笑われてるだけですよ!」

「なんかすみませんね。節操なしが多くて」

「予想してましたから大丈夫ですよ」

作業を中断している間に気付けば年を越してしまった事にも誰も気づかず気付いたときには10分も経過してしまっていた。
忙しいのに長居は無用だと一人で帰ろうとする誠司の後を追いかけて静まり返った非常階段を一緒に降りる。

「なんかごめんね?」

「それ橘さんにも言われたよ。料理は趣味みたいな物だから気にしないで。にしても徹夜中はやっぱりすっぴんなんだね」

「やっぱりマズいかな!?」

「ううん。すっぴんでもかなり可愛いから大丈夫」

「~っそんな事言ってるの誠司だけだから」

「律、5分だけ大丈夫?」

階段途中の踊り場で足を止めた誠司が振り返り私と同じ高さになって真面目な顔で聞いてくる。

「大丈夫だけど‥」

「良かった」
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