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キスをして
第10章 珍事と感傷
「誠司今何処?」

『真下!』

「ははっ律香ちゃんと酒盛りしてるの。おいで?はい。返すね」

「似てますね」

キョトンとした顔を向けるお姉さんは気付かないらしい。

部屋に響きだしたチャイムの音に笑いすら覚える。
鳴らし方までそっくりだ。

「お隣さんに迷惑だよ」

「大丈夫か!?」

ドアを開けた瞬間に私の体をパタパタと触りながら何かを確認している。

「誠司。あんたいったい何の確認してるのよ」

「自分の胸に聞いてみろよ」

「律香ちゃん誠司なんて優しくないわよ」

「変なこと吹き込むな」

「変な事って何かなぁ?」

さすがお姉さん。誠司をからかうの慣れてるなぁとしみじみ思う。

「お姉さん家の前で待ってたよ?約束してたの?」

「してないよ。この人がそんな常識的な事する訳ないじゃないか」

「はぁ!?電話したでしょうが!」

「5分で着くのどこが連絡なんだよ!出掛けてて気付かねぇよ!」

「それはあんたの落ち度でしょ!?」

「もういい」

お姉さん。コレは怒ってますよね…?怒らないなんて嘘じゃないですか!私への怒りなど大したことないです!

「なんか用事?」

「用事なら済んだわよ。帰るわ。律香ちゃん下まで見送って?」

「外寒いんだから良いにしろよ」

「女の会話に口出すんじゃないわよ」
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