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キスをして
第11章 小塚誠司
「誤魔化された」

「そんなつもりはないよ。律が何も聞かないから」

素肌に触れる温もりについつい微睡んでしまう。
シャワー上がりに髪を乾かして貰っていたはずがベッドに流されて今に至る。

「最近忙しそうだよね」

「ダヴィッドさんが働けない分向こうで対応出来ないものが増えたからね」

「……向こうには代わりが居ないの?」

「誰かの仕事を引き継ぐには気を使うものだよ。一から作る訳ではないから気分的には余裕だよ。それにあれでも少ない方だよ。スイス時計のブランドを望まれたら日本では出来ないからね」

「向こうの方が仕事し易い?」

「自分の時計を作るならどこでも一緒だよ。それに息抜きしながら仕事するのも大事だと最近思うしね」

肌を滑るように股に差し込まれた脚に身体が跳ねる。

「私は息抜きなの?」

「律は一緒にいると癒されるかな。でも、律を苛めるのは息抜きかな」

「酷い」

「ごめん。つい可愛さ余って」

「適当に言ってるでしょ」

「…最近理解してきたね」

「バカ」

「痛っ」

私に叩かれた額をさすりながら私の頬にキスをした。

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