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キスをして
第11章 小塚誠司
「人の仕事引き継ぐには気を使わなきゃいけないから」

「だから気を使って回せる奴が居ないなんて大変だろうなって」

どうして誠司の言葉に疑問を持たなかったんだろう。
気を使わなきゃいけない仕事を誠司がしてたの?
独立してるはずなのに?

「まぁ急なことで仕事量多すぎて跡継ぎがパンクし掛けた落ちかも知れないけどな。オッサン向こう長かったんだろ?前から仕事来てたなら固定客が付いてたかもな」

「そうだよね。仕事貰ってるって前に言ってたし」

もう隠し事はしないって言ってたし深く考える事じゃないのかも。

「お前さぁ‥最近何か変じゃね」

「何時も通りだけど」

そう答えた私を穴が開くんじゃないかと思うほど食い入るように見つめてくる。

「何!?」

「悩み事は拗れる前にだぞ」

「私‥そんなに悩んでる?」

「遂に自分のことも分からなくなったのか」

「違うわよ!」

黒沢さんの軽口に言い返しながらもまた分かりやすく顔に出てるんだと気付かされた。
だから食事なんて言い出したんだ。

幾ら友達でも元彼にこんなに気を使わせてちゃ駄目だよね。

モヤモヤするのいい加減止めなくちゃ。
らしくないって言われてる気がした。

……ん?

「今気付いたんだけど何で黒沢さんが誠司が向こうから仕事貰ってること知ってるの?」

「……あ」
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