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キスをして
第11章 小塚誠司
もうなんなのよ!
私が誠司から言付かったメモはアドレスだったなんて!しかも二人で飲みに行ってたなんて私全っ然聞いてない!

食事をしてアパートの前に付いたのは午後3時半を過ぎたところだ。

アパートに真っ直ぐ帰り着替えを済ませ再びアパートの下まで降りてきた。横の時計店は日曜ということもあり閉店している。
持っていた鍵で店内に入り来訪を伝えることなく相変わらず箱が山積みの作業場を通り2階へ向かう。
仕事をしていないなら2階に居るはずだ。
トントンと分かり易く音を立てながら階段を上りリビングの部屋を勢い良く開けた。

……………あれ?反応がない。

リビングを見渡すとソファの上ですやすやと幸せそうに眠っている。
あまりの無防備さに拍子抜けしてしまった。
言いたいことあるのに!気合い入れてきたのに!と思うが起こすのは何だか忍びない。

「出鼻を挫かれてしまった‥」

出直すべきだろうか。
でも、折角来ちゃったし…暫く居座ってみよう。
そう思いソファの前に座った。

ふと、違和感を感じた。
違和感を探ろうと辺りを見渡すとすぐに気付く。

「…時計がない」

部屋に飾ってあった大切な時計が無くなっている。
作業場に持って降りたのかとも思ったが置いてあればすぐに気付く筈だ。

駄目だまたモヤモヤして来る。
誠司のことになるとつい後ろ向きに考えしまう。

本当聞くことが山積みだ。

誠司の降ろされた手の側で腕を組み顔を乗せた。

「早く起きてよ」
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