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キスをして
第11章 小塚誠司
画材屋を出る頃には外は真っ暗で身を縮めてしまうほどの寒さだ。

「帰ったらご飯作るから食べたい物考えておいて」

そう言って握った手を自分のジャケットの中に共に入れる。
誠司のポケットの中は私のカーディガンとは違ってすごく暖かい。

可愛い女の子なら腕に寄り添ったりするんだろうけど私にはできる芸当じゃない。

「気にしてるよね」

姪の事を言ってるのはすぐに分かった。口に出すのは気が引けて誠司を一瞥するとふっと笑みを零した。

「嫉妬してる?」

「してない」

「残念。して欲しかったな」

身を屈めて私の唇に自分の唇を添わす。

「嫌‥暗くても外だから」

「じゃあ帰ってからね」

ご飯作るんじゃなかったのかと抗議する言葉を失うほど妖艶に笑うから言い損なってしまった。

「嫉妬深いとか独占欲強いのって嫌じゃないの?」

「人による。律にされるのは嬉しいし前みたいに自分から来てくれるのは更に嬉しい」

「!忘れてよ!」

「忘れないよ求められると男だって嬉しいんだよ」

昔の私なら笑い飛ばしてたかも。
今は笑い飛ばせないほど心臓が激しく鼓動してる。
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