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キスをして
第11章 小塚誠司
誠司の家に上がりリビングのソファに座る。
さっき言われた言葉が頭から離れない。
誠司はそんな事お構いなしに自分のペースでキッチンに立ち調理を始めようとしている。

「食べたい物ない?」

「お、お任せします」

変な事言うから緊張するじゃない。
今まで受け身で来てたからいざとなるとタイミングが分からない。
前の様に勢いになる出来事がない。
そもそも無理して迫る必要なんて無いんじゃないか。

「律」

「はいっ!?」

「そろそろ笑いそうだから落ち着いてくれるかな。それとも機会を窺ってたとか」

「そ!そんなわけないでしょ!」

「‥ふーんごめんね。先にお風呂入ってきなよ」

「そうする」

言われるまま立ち上がって気付いた。

「泊まっていくよね」

反論する気も失せるわ。
まぁ何言ったって泊まらせる気だろうけど。

湯船にお湯を出し始めてから寝室にある着替えを取り出して脱衣所へ入る。洗濯機の横の棚からタオルを取り出して服を脱ぐ。
もう慣れてしまった自分が笑える。

「飼い慣らされた気分」

まだ半分しか溜まっていない湯船に浸かり大きく息を吐いた。

誠司と付き合うようになってから自分が弱くなったように感じる。面倒な女になんてなりたくない。かと言って可愛くはなれない。

何が不安なのか分からない。それなのに何かがずっと引っかかっている。
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