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キスをして
第11章 小塚誠司
ダヴィッドさんが仕事に復帰できれば今までのようになるよね?
誠司だってそう言ってたし。
でも何かが不安になる。

私は一体何に駆られているんだろう。

シャワーで体を流して脱衣室から出る。前みたいに他人事だと割り切れたら楽なのに。

────バフッ

······

「あの?何?」

「律が最近会う度変だから心配で考えたんだ」

「はあ」

「俺が最近ずっと優しくしてるから裏があると思って不安にさせてるんじゃないかなって」

絶対違うから!
その結論わざとでしょ!
タオルで顔ごと覆われて全く誠司が見えないが笑っている事だけは分かる。

「だから前みたいに意地悪してみようかなって」

「意地悪してる自覚あったんだ」

「意地悪されてる自覚があったのに側に居たならされるの好きだったんだ」

「は!?違っ」

「期待に応えないとね」

そう言って濡れたままの私をタオルごと抱き上げて寝室へ連れていく。

「知ってる?困ってる時の律は凄くそそられるんだよ」

「そんな··知らない」

ベッドの上で覆い被さったまま熱を帯びた目で見つめる。
私をベッドに押し止めたまま触れられてもいないのに体が熱くなっていく。視線に犯されている気分だ。

「どうしたの?目が潤んでる」

見透かしたように笑う誠司にこれ以上悟られたくなくて顔をそらす。

「耳まで赤いから意味ないよ」

耳元で甘く囁いて耳の輪郭をなぞるように舌が動く。

「····っん」

耳を探る水音が私を攻め立てる。
自分からなんて誘うなんて恥ずかしいのにシーツを握りしめていた手が誠司に触れたくて仕方ない。

結局いつだって誠司のペースでしか私は動けない。
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