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キスをして
第12章 律香と誠司
「じゃあ、お米洗って来るね」

「····ぇっ」

「すぐに終わるよ。寝室に行っておいて」

私の横をすり抜けて頭を撫でてキッチンへ向かう。

不敵な笑みを浮かべてウキウキとお米を洗い始めている。

ええぇぇぇっ···

待ち望んだ物が得られなかった体は熱を帯びたまま埋めてくれるものを待っている。
体の奥が疼いて堪らない。
早く触れてほしい。
自らの手を延ばしたいと思いながらも衝動を払う。
今すぐ抱いて欲しいのにこんなにも自分は浅ましくなっただなんて知られたくない。

寝室へ行くように視線で促されたが一人で行くには凄く寂しい。

「隣行っちゃダメ?」

「良いけど··」

私がこんなことを言い出すと思っていなかったのか目を見開いていたがすぐに優しく笑った。

「椅子どうぞ」

カウンターに有った椅子をシンクの側に運んで私を座らせる。

リズムよく米を洗う音だけが部屋に響く。

毎日やってるから慣れてるなぁ。
殆ど同棲と言ってしまっても間違いない程にこの家に入り浸っている。形の上では断りはするが断りを受け入れてもらえるとは思っていない。
このままこっちに居座る形になっていくんだろうか。

·····にしても本当その辺の女の子より家事スキルが高い気がする。
誠司は結婚しても変わらずにやるつもりなんだろうか。それとも私もいい加減覚えなくちゃいけないのかな。

あまりにも手際がよくて見いってしまう。

「よし、律終わったよ。···律?り~つ?」

「!!っ」

誠司の声に気付いて視線を上に向けると間近にある顔に驚嘆した。

勢いよく立ち上がったせいで盛大に椅子が転がる。
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