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キスをして
第12章 律香と誠司
「べ··別にっ」

「ふっ─大丈夫?どうしたの顔真っ赤だよ」

「なっなんでもないから」

「さっきの続きを期待してた?」

「っ··してた」

肯定されるとは微塵も思っていなかったであろう誠司が動揺した隙に抱き付いた。

暫く抱き付いたまま待ってみたが反応が一切無くて引かれてしまったかと不安になる。

でも誤魔化そうとしていた燻ったままの熱に突き動かされて様子を窺う。

あ····

少し頬を赤らめた誠司に嬉しくなってシャツを引いた。

重ねただけの唇は物足りなさを感じたがすぐに深く重ね合わせられる。
自分からした筈なのに誠司に主導権を明け渡し与えられる舌先に従う。

舌に唾液を絡ませて上顎を擦り歯列をなぞる。戸惑った私の舌を吸い上げて舌裏を掬い誠司の口内に誘われる。

「あ··はぁ、ふ··ん、 あ」

背伸びした体が自分では支えられない。
滑り落ちてしまわないように腰を引き寄せ頭を掴まれていた。

激しく愛撫される口内がどちらとも分からない唾液で満たされていく。
息苦しさに背に回した手で誠司のシャツを握り締めた。

「寝室連れて行ってあげようか」

糸を引きながら離れた舌を目で追った。

「ん、··もっとしたい」

「かわいい··律が欲しいなら幾らでもあげるよ」

ふわりと柔らかく微笑んで軽々と私を寝室へ運ぶ。

「歩··けるから」

「嫌だ。折角律から誘ってくれているんだから俺にもっと浮かれさせてよ」

「そんな風に見えない─」

「明日は昼まで寝てようか。余力残してあげられないと思うから」

ベッドに埋まる身体にキスを降らせながら服を脱がせ身体中に印を残す。

声にもならない甘えた息が耳に残った。
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