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キスをして
第12章 律香と誠司
薄手のジャケットを羽織り財布と鍵をジャケットのポケットに入れて部屋を出た。
「やっと出てきた」
「!!···っな·ん」
「ここで待っていればいつかは出てくるかと思って」
ドアの横に座り込んで微笑みを浮かべた顔を私に向ける誠司がいた。
インターホンを鳴らしたときからここに居たのだろうか。コンクリートの冷たい床に長い間座っていたのだろう少し顔色が悪いような気がする。
「律。話したいことがある」
私の手を取ろうとした手を反射的に振り払った。
自分が震えているのが分かる。
ただこれが怒りなのか悲しみなのか分からない。
「私は聞きたくない」
一度出たドアを開いて部屋に逃げ込む。
────ガンッ
「お願い足を退かして!」
「律。聞いて」
「聞きたくない··の」
お願いまだ泣かないで。
彼の前で泣きたくない。
「律」
呼ばないで。
唇が震えて視界が揺らいでいく。
顔を上げることが出来なかった。
「っ律香」
震えて力が抜けたと同時に誠司の腕に包まれる。
「何も言わないで··聞きたくないの」
苦しくなる程にきつく私を抱き締めてくれる。
でもそれが優しさからではないともう分かっている。
「日下さんに聞いたんだね」
静かにそう言って私をソファに運んだ。
温かい湯気と共にほろ苦いコーヒーの薫りが私を落ち着かせてくれる。
「少し落ち着いた?」
心配そうにソファに横にスツールを置いて私の様子を見ている。
「ごめん···頭がまだ追い付いてなくて」
「いや、俺が悪いんだ」
「日下さんの話、まだちゃんと聞いてないの··話してるの聞こえちゃっただけで」
「あ···そうだったのか」
お互いに言いたいことはある筈なのに言葉がうまく出てこない。
「やっと出てきた」
「!!···っな·ん」
「ここで待っていればいつかは出てくるかと思って」
ドアの横に座り込んで微笑みを浮かべた顔を私に向ける誠司がいた。
インターホンを鳴らしたときからここに居たのだろうか。コンクリートの冷たい床に長い間座っていたのだろう少し顔色が悪いような気がする。
「律。話したいことがある」
私の手を取ろうとした手を反射的に振り払った。
自分が震えているのが分かる。
ただこれが怒りなのか悲しみなのか分からない。
「私は聞きたくない」
一度出たドアを開いて部屋に逃げ込む。
────ガンッ
「お願い足を退かして!」
「律。聞いて」
「聞きたくない··の」
お願いまだ泣かないで。
彼の前で泣きたくない。
「律」
呼ばないで。
唇が震えて視界が揺らいでいく。
顔を上げることが出来なかった。
「っ律香」
震えて力が抜けたと同時に誠司の腕に包まれる。
「何も言わないで··聞きたくないの」
苦しくなる程にきつく私を抱き締めてくれる。
でもそれが優しさからではないともう分かっている。
「日下さんに聞いたんだね」
静かにそう言って私をソファに運んだ。
温かい湯気と共にほろ苦いコーヒーの薫りが私を落ち着かせてくれる。
「少し落ち着いた?」
心配そうにソファに横にスツールを置いて私の様子を見ている。
「ごめん···頭がまだ追い付いてなくて」
「いや、俺が悪いんだ」
「日下さんの話、まだちゃんと聞いてないの··話してるの聞こえちゃっただけで」
「あ···そうだったのか」
お互いに言いたいことはある筈なのに言葉がうまく出てこない。